私は、幼い頃からテーラー二代目の父親から「いいか、スキャバルの生地が世界で最高の生地なんだぞ」。と常々聞かされておりました。大学を卒業し、その家業であるテーラーを受け継いで、いつかはきっと、その生地の最高峰である【スキャバル社】に行き、凄さに自分の肌に触れてみたい・・・。と願っておりました。このたび、当店の生地の取引先である東京のB社の社長、藪○様のご好意とスキャバル輸入総合代理店である「スキャバル・ジャパン」石川社長のご配慮で、昔からの夢で憧れであったスキャバル社に伺うことができました。藪○様、本当にありがとうございました。この場を借りて篤く御礼申し上げます。 |
スキャバル社は、1938年の創業以来、ベルギーのブリュッセルに本社を置いています。 その理由は英国やイタリアから調達した生地を、欧州各地に供給する絶好の中間地点のためなのです。実際ブリュッセルはヨーロッパのほとんどの主要都市まで空路で1時間以内。現在でこそEUは存在しますが、スキャバルは創業当初から「経済活動としての欧州連合」を視野に入れていたのです。 そういったことを聞きますと、あらためてスキャバルの素晴らしさに驚きます。 |
スキャバルの生地はすべて、ベルギー本社の裏にある巨大な倉庫に保管されております。 イギリスやイタリアから丹念に織り上げられた膨大な数に及ぶ生地がここにすべて一堂に集められます。そして私が痛感したのは徹底した品質管理。「常に最高級の原材料だけを使用し、どれほど作りなれた定番生地も、1cm刻みの検査に合格しない限りスキャバルと名乗ることができない」。と、スキャバルのベテランスタッフ達が異口同音におっしゃってました。 |
「私達テーラーがスキャバル社に生地を頼む。その後どんな場所で、そしてどんな変遷で送られてくるのか・・・」。私はここが一番興味を持っていました。写真をご覧のように、世界のリテール(小売店)の注文から発送まで、すべてシステム化され間違いのない色柄の生地が1日約700着以上、ベテランのスタッフ達の手によって速やかに発送されて行くのです。「そうか、そうだったのか」。と私はすべての疑問がここですべて解けました。 |
日本でもよく見かける世界で初のバンチシステムを導入したのがスキャバルです。そのおかげで、我々各テーラーも生地のロスも少なくなり、お客様にも常に新鮮な生地をご紹介できるようになったのです。 そして私が何よりも驚いたのが、そのバンチの製作がこの生地倉庫のすぐ脇でスタッフ達がすべて手作業で時間をかけて丁寧に行なっていたのです。これでは間違いのないバンチができるわけです。 |
最後にスキャバCEO Mr.グレゴリー・ティッセンがおっしゃってました。「現状に甘んじず、これからも積極的に新素材を開発して行きますよ。1991年に発表したスーパー150s'や250s'生地も早く開発しましたし、ダイヤモンドやラピスラズリを組み込んだ異素材ミックス生地もね。今後も新素材開発には一切の労も、時にはコストさえも惜しみません」。これからの【スキャバル】も本当に目が離せませんね。その企業理念がさらにスキャバルを飛躍させているのです。私は、この素晴らしいスキャバルの生地を今後もお客様に勧めることを心に誓い日本に帰りました。 |
1938年オットー・ハーツにより設立されたスキャバルは、ロイヤルファミリーや大統領や首相、ハリウッド俳優から高い評価を得る高級紳士服地のマーチャントとして成長しました。その一歩は、バンチ(生地見本帳)を世界で初めて考案し、服地の流通システムに革命を起こしました。スキャバルはまた、原毛の選択から仕上げまで常に高い品質へのこだわりを持ち、一貫した管理体制の中で卓越したクラフトマンと先端技術によって生産しています。高品質への探求心と技術革新の代表例が、ダイヤモンドを細かく砕きウールに組み込んだ「ダイヤモンドチップ」や22カラットゴールドをストライプにした「ゴールドトレジャー」などの服地を誕生させました。「一切の妥協も労力も、時にはコストさえも惜しまず織り上げる」その企業理念がさらにスキャバルを飛躍させているのです。 |